あのねっと 今号の特集テーマ 子育て、親育ち  

ワニータ・ハイアムさん
Juanita Heigham

ミズーリ州セントルイス市出身、1996年来日。大学准教授として英語を指導。夫の国貞幸浩さん、1歳のジェイセン汰(たい)くんと名古屋に在住。

中高生の責任感を養うために

 息子は今1歳ですが、実は日本の保育園に預けるのは心配でした。というのは、アメリカでは赤ちゃんのうちはベビーシッターに預けるのが一般的ですから。でも、実際に保育園のお世話になってみて、とても満足。子どものことをよく考えてくれるし、親のことも大切にしてくれます。アメリカにも子どものデイケアセンターはありますが、市や政府が組織的に運営しているわけではないし、親の収入や子どもの数によって保育料が変わるシステムもないですね。
 アメリカにはプロのベビーシッターがいて、自宅で複数の子どもを預かる場合と、子どもの家へ出張して一対一で世話をする場合とがあります。また、近所の中高生にアルバイトでベビーシッターを頼むことも多いんですが、それは小さい子の世話をすることで責任感を養うため。私も中学1年のときに初めて隣の家の小学生2人を預かりました。短い時間でしたが、アルバイト料をもらってうれしかったですよ(笑)。

かけもち自由のクラブ活動

 アメリカの学校にもクラブ活動はありますが、日本のようにひとつのクラブに所属し、夏休みも活動するスペシャリスト型とは違います。たとえば私が入っていた弁論部では、競技会の時期だけ集まって練習するという形。だから、ひとりがいろいろなクラブに所属できるんですよ。
 夏休みには、子どもたちは歌やクラフトなどを楽しむ地域や教会の行事に1〜2週間単位で参加したり、いろんな学校の生徒が集まる地域のサッカー大会や野球リーグに出場したり。泊まりがけのキャンプで、カヌーや乗馬などを楽しむこともあります。
 キリスト教の影響が大きいと思いますが、子どもには人としての正しい行いや思いやりの大切さを教えます。もちろん「勉強しなさい」とは言いますが、クリエイティビティや地域への貢献も大事にするなど、バランスのとれた人間に育てようとしている気がします。

息子には夫も英語で

 日本には、夜まで働くサラリーマンカルチャーがありますが、アメリカでは子どもがいるのに、夕方に帰宅できない会社なら転職を考えます。私が小さいときも、ほとんど毎日、父親も一緒に夕飯を食べました。週末は、父が家の修理や庭の手入れをして家事を分担していましたが、やはり子育ての責任を持っていたのは母親のほう。これは今のアメリカでも変わっていないと思います。
 今は日本に住んでいて、外は日本語の世界。だから、家では夫も英語で話しかけて息子をバイリンガルに育てたいと思っています。言葉だけでなく、両方の文化を大切にできる人に育ってほしいですね。私が息子に教えたいのは、国籍や肌の色や性別にかかわらず他人を尊敬すること。そして、他人に親切にできる人になってほしい。人に親切にすれば、人からも親切にしてもらえて、結果的に自分も幸せになれるのでは? 彼がハッピーであることが、親としての一番の願いですね。

【夫の幸浩さんからひとこと】

妻は思い立ったらやる人で、子連れでタイへ1カ月出張したときも、まず行くと決めてから子どもと一緒に住む家を借りたり、ベビーシッターを見つけたり。慎重派の僕としては、子どもがいてもしたいことをするその姿勢と行動力を尊敬します。もともと違うからこそ、よく話し合うことでわかり合っていけるのも国際結婚のおもしろさですね。