あのねっと 今号の特集テーマ 子育て、親育ち  

 僕の絵本を読んでくださった方から、膨大な数の読者カードが届いて驚いています。絵本のあとがきに、その本ができるきっかけになった子育てのエピソードなどを書いているんですが、それを読んで「共感した」とか「うちの子にそっくり」とか。絵本じゃなくてその感想か、というくらいに(笑)。
 もちろん絵本の感想もあります。たとえば、最初に出版した『くっついた』に対して多いのは、お母さんと読んでいた子どもが、最後のページになるとお父さんを呼びに行き、3人で「ほっぺたがくっついた」をさせるというエピソード。なかなか子育てに参加できないお父さんも、照れながら親子3人でほっぺたをくっつけて、幸せを味わってもらえたらいいですね。
 『くっついた』が生まれたのは、赤ちゃんだった娘にほっぺたをくっつけたら笑ってくれた、という話を出版社の方にしたときに、「それを絵本にしたらいいんじゃない?」と言われたことがきっかけです。なるほど、そういうことが絵本になるんだと思ったのと同時に、以前から考えていたマルとマルがくっつくグラフィカルな絵本のアイディアと結びついたことで、『くっついた』が出来上がりました。また、出来上がってから自分が伝えたかったことに気づくこともあり、最新作の『おはなをどうぞ』は、お母さんにお花をあげたい気持ちを描いたものなんですが、実は子どもの自立の話なのかなと思ったりしています。
 娘を見ていると、絵本の題材になりそうなことは毎日のようにありますし、娘にも読ませたいなあと思って制作しています。でも、作りたいもののアイデアは、子育てだけでなく今の時代を見て感じることと制作意欲がミックスされて、自然に浮上してくる感じ。それを絵本という限られた世界にシンプルにまとめるのが僕のスタイルです。赤ちゃん絵本はライフワークですが、もっとデザイン的な絵も描きたいですし、ノスタルジックな世界や科学的な要素も織り交ぜながら、作品づくりをしていきたいですね。
 僕はすごく子育てに参加しているように見られるんですが、本当はできる限りお母さんに任せて逃げていたいタイプ。できれば今から「早く嫁に行け」と思っているぐらいなんですよ(笑)。でも、実際は特に仕事が忙しくなければ6時ごろ家に帰り、「パパ、相撲しよ」と言われれば相手をして何度も投げられたふりをしたり、苦手なおままごとに1時間も付き合ったり。そして、夕飯を一緒に食べ、お風呂に入れて寝かしつけ、夜中に「怖い夢見た」と言ってきたら、手を握って一緒に寝て…。
 また、朝も目を覚ますと同時に「パパ、お馬さん」と言ったりするので、背中に乗せてトイレに連れて行くんです。いつまでやるのかなあ、ここまで過保護でいいのかなあ、せっかくならそれを突き詰めようか、なんて思っています(笑)。でも、あと1〜2年ぐらいだろうから、ここを何とか乗り切れば、また静かな生活が待っているかなという気もしています。
 寝る前の絵本の読み聞かせは僕の役割です。以前は、赤ちゃん絵本を2冊と少し長めのものを1冊読んでいましたが、今は娘が読んでほしい本を持ってきます。たまに、わざとらしく『くっついた』を持ってきたりしますよ。今日は長いのを持ってきたなあと思うこともありますが、最近は眠いのか、たとえば『ブレーメンの音楽隊』とかを読んでいると1冊で寝てくれますね。
 子育てって、自分の時間をどれだけ子どもにさけるかですよね。現代社会は、便利になった部分もあるんだけれども、やらなきゃいけないことが多いし、何かと時間に追い立てられる。だから、子どもの世界に合わせようとするより、大人の時間に子どもを参加させたり、親自身も楽しめる遊びに子どもを引っ張り込む形にすると、気持ちがラクかもしれませんね。
 僕の場合、娘とのつながりは工作かなと思っています。子どものころ、絵を描くより先に目覚めたのが工作で、大人になってからはしませんでしたが、子どもができたことでまた復活しました。娘が厚紙を持ってくると切って車を作ったり、トイレットペーパーの芯で合体ロケットを作ったり。仕事で人に見せるものを作るのとは違って、テープを貼っちゃえばいいみたいな雑な感じと、いい加減に作っていく具合がおもしろいんですよね。いつも僕が娘を保育園に連れて行くんですが、遅刻しそうなくらい朝から工作に夢中になっていることが多いんですよ。妻もイラストレーターですが、昨日はクッキーでムーミンの家みたいなものを作りながら、娘に砂糖を塗らせたりして一緒に楽しんでいます。
 夫婦とも、娘に何かをさせることには重きを置いていなくて、基本的には「楽しかったらいいじゃない」という感じです。僕自身、大学を卒業するときにようやく自立を考えたぐらいです。そして、自分ができることは何かを考えて仕事をしてきました。だから、娘にも何か自分にできること、おもしろいと思うことがあるなら、自由にやらせてあげたいと思っています。
(2009年12月10日取材)
●みうら・たろう
1968年愛知県西尾市生まれ。大阪芸術大学卒。イラストレーターとして活動し、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展に入選後、絵本『くっついた』(こぐま社)を発表して絵本作家に。その他の作品に『よいしょ』(偕成社)、『おしり』(講談社)、『バスがきました』(童心社)、『CO2のりものずかん』(ほるぷ出版)、『おはなをどうぞ』(のら書店)などがある。お子さんは5歳。