あのねっと 今号の特集テーマ 子育て、親育ち  

貂々さん 息子はいま1歳3カ月ですが、生まれてみてツレの母性本能の強さにびっくりしています。
昭さん いやあ、僕も子育てに専念してみて、母性と女らしさは全く別のものなんだと知りました。女言葉で子どもに話しかけなくちゃいけないのかと思っていたけど、少し乱暴な言葉づかいをしながらでも、やさしくできる。母性は男でもOKですね。だから、彼女が「おっぱい、出ない」と言ったときは、「しめた!僕がミルクを作って飲ませてやれる」と(笑)。
貂々さん 私がいくらあやしても泣きやまないのに、ツレが抱くとピタッと泣きやむし、夜もツレが一緒じゃないと寝ないので、私だけひとりで寝て「あ〜疎外感…」。私が仕事に行くときも泣いていやがることもなく、帰ってきても「お前はだれだ?」みたいな様子。私が1年間お腹の中で育てたのに「こんなもん!?」と最初は思いました(笑)。
昭さん 今は「帰ってきた!」と息子は喜んでいるけど、明らかにパパ的な感じですね。でも、世間のお父さんのように腕力はなくても、彼女はいいパパです。育児の仕方にも余裕があって融通がきくし。僕の育児はくそまじめ。やはり、主にかかわっていると基本を押さえるだけで精一杯で、冒険できなくなっちゃうんですね。
貂々さん ツレは、離れたところからでも、しょっちゅう「ウンチか?」って言っているのに、私はとなりにいても気づかない。やっぱり、集中しているかどうかの違いなのかな。
昭さん 僕らは子どもをつくらないつもりだったんですけど、僕が病気になって会社をやめて、体調がよくなったら子どもができました。結婚12年目のことです。これまで飼ってきたイグアナやカメよりもすごい新メンバーがやってくる、と覚悟はしていたけど、実際に育て始めたらびっくりすることばかり。夜中に3〜4回起こされて授乳しなくちゃいけないし、だんだん1日の切れ目がわからなくなり、戦場に放り込まれたような気分でした。
貂々さん ふたりとも体力はもたないし、私は産後うつみたいになってしまって。ツレがうつになる経緯を見てきたので、自分は大丈夫と思っていたんですけど、ツレに「おかしい」と言われるし、涙が止まらない自分がいたので「もしかして」と。生まれた直後は、みんなに「おめでとう」とか「泣いてもかわいいもんでしょう」と言われて、本当は大変だと言いにくくなり、ストレスがたまっていったんだと思います。
昭さん 大人だけで生活していくルールがあって、その形で社会に向き合ってきたので、そこへ小さな哺乳類の生きものがやってきて、すごくかきまわされました。それでも、うちの子は1カ月半ぐらいで夜3〜4時間寝てくれるようになりました。ただ、4カ月ごろから僕がいないとぐずるようになり、買い物にも連れて行かなくちゃいけない状態が今でも続いています。
貂々さん 近所に商店街があるんですが、赤ちゃんを連れていると、知らない人でも話しかけてくれるんですよ。プチ相談というか、「そんなのはこうで大丈夫よ」とアドバイスをくれたりします。
昭さん 何カ月かに一度、僕のストレスがたまってキーッとなっちゃうときは、彼女に預けて買い物に行ったり、僕の実家に連れて行ったり。僕の仕事は、てんてん企画の経理と子育てエッセイを書くことだけなので、基本的には朝4時ぐらいに起きて仕事場に行き、7時半ごろまで仕事をするという生活です。
 貂々さん ツレは、育てることに命をかけてしまう人なんです。イグアナやエビやカメを育てるときもきっちりと調べていたし、子育てに向けても育児書を読みまくっていました。私が「まさか妊娠するわけないよ」と言っていたときから、妊娠したときの症状を詳しく教えてくれたり、つわりのときも何が食べられるか調べたりして。
昭さん 生きものとして、すごくおもしろくて(笑)。たとえば、ご飯の炊けるニオイが嫌だと言っているのに、おにぎりを「おいしい」と食べたり。謎が多いですよね。子どもも、未完成のおもしろさを感じます。お乳を飲む口だけがすごく発達して自由自在ですごいなと。首がグラグラなときは、ちゃんと支えられるようになるとは思えないのに、支えられるようになるとグラグラだったことが信じられない(笑)。
貂々さん 最近は、ツレが好きなクラシック音楽のDVDを流していると、子どもが指揮者のまねをするんです。
昭さん 特にカラヤンという指揮者は動きがおもしろいのでジッと見るんですね。まわりの人は楽器を持っているのに、ひとりだけ真剣に指揮をする姿がおもしろいと思うんでしょうね。
 うちは他の家庭と違うので、この先、たぶん息子は「きみんちは変わってるよ」と言われることもあるだろうし、自分が正しいと押しつけることもあると思う。彼には、みんなを尊重できる子になってほしいので、親としてはできるだけいろんな形の家庭の人たちと接していけたらいいなと思います。
(2009年5月18日取材)
●ほそかわ・てんてん
1969年生まれ。セツ・モードセミナー卒業後、漫画家・イラストレーターとして活動。著書にNHKでテレビドラマ化された『ツレがうつになりまして。』(幻冬舎)や『ツレはパパ1年生』(朝日新聞出版)など多数。2008年1月に長男出産。
●もちづき・あきら
1964年生まれ。セツ・モードセミナー卒業後、会社勤めをするも、うつ病になり退職。現在は家事・育児をする一方で、幻冬舎ウェブマガジン『コドモ大人化プロジェクト』を執筆。著書に『こんなツレでごめんなさい。』(文芸春秋)。