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メディア実験室

「unlearn」という言葉があります。学ぶのとは逆の方向を志向して,既成の知識を得るのではなく,そこから離れてみることを意味します。小学校にあった理科実験室には,好奇心が旺盛で,怖いもの見たさの子どもには,密やかな魅力が満ちていました。そこは,手際よくまとめられてはいるけれど味気ない教科書を使った学びとは違って,一人一人が何かを発見できそうな,今にして思えば「unlearn」な場所でした。この「メディア実験室」も,コンピュータが並ぶすまし顔の空間ではなく,まだまだ得体のしれないメディアなるものを実験してみようというお部屋です。

愛知県児童総合センターと3+1大学の研究室との連携のもとに,「メディア実験室」は実現されます。とは言っても,主役は,この部屋に遊びに来る子どもと大人です。センターと大学のスタッフたちとともに,これまでにないメディアプログラムを探す旅が始まります。ここは,2020年度から必修化される,小学校でのプログラミング教育とは,ちょっと,いやまったくちがう,もうひとつのプログラム思考を見つける場でもあります。

開催中

期間 2018年9月22日(土)ー2018年9月30日(日)

会期中の休館日 9月25日(火)

時間 10:00ー16:00(開館時間は9:00-17:00)

主催 愛知県児童総合センター(公益財団法人愛知公園協会)

企画,監修 名古屋芸術大学芸術学部 芸術教養領域 茂登山清文

茂登山清文
専門は視覚文化と情報デザイン、ヴィジュアルリテラシー。建築を学んだ後、1998年まで名古屋芸術大学美術学部造形実験コースで、2016年まで名古屋大学大学院情報科学研究科 情報文化学部で、研究・教育に携わってきました。現在は、「何者にもなれる君へ。」をキャッチフレーズに開設された芸術教養領域リベラルアーツコースに所属し、教養と芸術とが交差する、これまでの芸大にはないジェネラリスト教育を目指しています。愛知県児童総合センターでは、「アートと遊びと子どもをつなぐプログラム」、「汗かくメディア」のプログラムにかかわってきたほか、「エキゾチック」の企画、「小さい美術館」の展示をおこんなってきました。今回の「メディア実験室」では、三大学の研究室と連携して、企画とデザイン、会場のディレクションなどを担当します。

 

・いつもとちがう  感覚変容工房トーランス

感覚は、目や耳や鼻から光や音やにおいを、手や足から大きさやあたたかさを、わたしたちが脳でうけとって、心でとらえることです。わたしたちの体のかたちは少しづつちがいます。同じようにわたしたちの世界の感じかたも少しづつちがうのではないでしょうか。わたしたちの実験室では、いつもとはちがう感覚をつくりだそうとしています。いつもとちがう世界をつくって実験することをシミュレーションといいます。わたしたちはいろいろな道具をつくって、みなさんの感覚をすこしのあいだだけ変化させる世界をつくりだそうとしています。いつもとちがう感覚をもったあなた自身をシミュレーションしてみましょう。いつもとちがう感覚で感じる世界を体験してみてください。

感覚変容工房トーランス
人間の持っている感覚の可能性を広げるための研究をしています。感覚器官と身体の配置を見直したり、人間が持っていない感覚器官を作るなどして、普段とは違った世界の感じ方を創り出そうとしています。
[研究員]
村上泰介 愛知淑徳大学創造表現学部メディアプロデュース専攻 准教授
コンコルディア大学(カナダ)デザイン学修士
DAVID SOMIAH CLARK Concordia University
[研究アシスタント]
村上創英 あいわ幼稚園年長すみれ組

 

もじ・モジ・じっけんしつ  静岡理工科大学情報学部 情報メディア設計研究室

「もじ・モジ・じっけんしつ」は、センターのプログラム「もじ・モジ・ファクトリー」とのコラボレーションで実施します。「もじ・モジ・ファクトリー」では、以下のようなコンセプトの下、多様な手法での文字造形が行われています。(愛知県児童総合センターあそびワンダーブック20th. Anniversaryより説明文を抜粋)
世界にはたくさんの文字があり…略…すべて全く違うカタチをしていて、ほとんどの人が読めたり使えたりする文字…略…誰も読むことができない文字もあります。
さらに、文字それぞれにわたしたちは何かしらのイメージを持っています。…略…そのイメージも書き方を少し変えるだけでかわってくるのが不思議です。
今回の「もじ・モジ・じっけんしつ」では、ここに、自身が造形した文字(以下モジとします)を既存の文章の文字と入れ替えるシステムを提供します。子ども達は、このシステムを通じて、ワンタッチで自分のモジと既存の文字や他人のモジを取り替えることができます。例えば、自分なりの「あ」を作って既存の「あ」と取り替えて満足する、サイコロの目のようなデザインと数字を入れ替えて数について考える、「い」の文字を「る」と入れ替えて元の文章を読解不能にする等の実験が可能です。子ども研究員による、多様な実験結果の報告を期待しています。

静岡理工科大学情報学部 定國伸吾
専門は、ユーザーインターフェイス。
岡山大学工学部、名古屋大学大学院人間情報学研究科博士前期課程で学んだ後、名古屋大学大学院情報科学研究科にて博士号(情報科学)を取得。大同大学、広島国際学院大学を経て、2017年度より静岡理工科大学に勤務。
曖昧で緩やかな変化を用いた情報提供の可能性についての研究や、ネットワーク上の情報を活用した児童向けの遊びを提案・発表。
情報メディア設計研究室
インタラクションを、人とコンピュータの間の入出力の組み合わせとして捉え、その適切な組み合わせによって豊かな情報メディアを設計することを目指しています。
今回の実験室は、新規に配属された3年生メンバーと、1、2年生の見習い(?)メンバーの混成チームが担当します。

 

・らんらんらん(Run! Learn! Run!) 情報科学芸術大学院大学

身体とメディアを使った遊びを実験します。われわれの出発点はアルゴリズムを遊びの中から発見するというお題から始めています。アルゴリズムとは一般的に問題を解決するための方法や手順と説明されています。しかし、ここで言うアルゴリズムは問題を解決するのではなく、自然の中にある法則や、機械と人との間にある法則、人と人との関わりの中にあるなんらかの法則のことです。何かを解決する前に、ある時は事象を観察し、ある時は人を観察し、そしてある時は自分自身を観察する中で、これってこんな風に考えられるんじゃないだろうか、メディアが入るとかかわりがこう変わるんじゃないだろうか、これってこんな遊びができるんじゃないだろうか、法則にならなくても考えるきっかけが得られればと思っています。アルゴリズムと聞くとコンピュータを使って遊ぶと思うかもしれませんが、コンピュータは見えるところにはなく、主となるのはコンピュータの入った遊び道具を使って、走ったり踊ったり身体を動かして遊んでもらうことです。また一人で遊ぶのではなく、何人かの子ども同士、あるいは子どもと大人と一緒に遊んでもらいます。

情報科学芸術大学院大学
情報科学芸術大学院大学の「あしたをプロトタイピングするプロジェクト」の1年生メンバーの共同作品です。このプロジェクトではアイデアを考えるところから実際の提案までをプロトタイピングし作りながら考え、実現していく方法をも探っていきます。1年生メンバーは次の3名です。五十川泰規はこれまで建築を学び空間設計を得意とし、地域社会との関わりを探求しています。大野正俊はグラフィックデザインとプログラミングを得意とし、データヴィジュアライゼーションを得意としています。鈴木毬甫はメディアアートを学びメディア表現を得意とし、ディスプレイの外へ表現を展開しようとしています。このプロジェクトでは一人で考えるのではなく、メンバー全員でアイデアを出し合い、それぞれの専門を活かしながら共同作業を進め実現していきます。プロジェクト担当教員はインタラクションデザインを専門とする鈴木宣也教授と赤羽亨准教授の2名が担当しています。

アートと遊びと子どもをつなぐメディアプログラム

愛知県児童総合センター(以下、センター)では、1996年の開館以来、「アートと遊びと子どもをつなぐプログラム開発」としてアートを介して遊びを活性化させるプログラムを全国から公募してきました。

センターの目指す遊びとアートには共通点があります。固定観念を問い直すアートの自由な発想と表現方法は、子どもたちを日常の縛りや通念から解放し、五感を開き、新しい気づきをもたらします。センターでも、同じように既成概念を取り払い身近なものごとを見直し、そこから新しい発見する遊びを開発しています。

コンピューターの発達によって、私たちのまわりには多種多様なものやこと、可能性が広がっています。『アートと遊びと子どもをつなぐメディアプログラム』では、アートの視点が取り入れられた様々な媒体(メディア)による新しい遊びを実現します。