汗かくメディア2019受賞作品公開展示【記録】

アートと遊びと子どもをつなぐメディアプログラム汗かくメディア2019受賞作品公開展示【記録】

終了しました

  • 会期
    2019年10月12日(土)から10月27日(日)まで

愛知県児童総合センター(以下、A C C)では、開館当初からおこなってきた遊具・あそびのプログラム開発事業として、「アートと遊びと子どもをつなぐプログラム公募」(第1期)を1996年から2002年度までの6年間実施し、2006年の再オープンから2016年までの10年間は「アートと遊びと子どもをつなぐメディアプログラム“汗かくメディア”」(第2期)として継続してきました。この間、数多く寄せられた優れた応募作品は、愛知県児童総合センターおよび地域のあそび場の活性化に寄与してきました。

A C Cの目指す[あそび」と、[アート]にはいくつもの共通点があります。
固定観念を問い直すアートの自由な発想と表現方法は、日常の縛りや通念から解放し、五感を開き、新しい気づきをもたらします。A C Cで開発されているあそびも、同じように既成概念を取り払い身近なものやことを見直し、そこから新しい発見が生まれます。
今、私たちの身の回りにはコンピューターをはじめとするデジタル機器があふれていて、もはや生活の一部となっています。そんな現代だからこそ、改めてデジタル以外のメディアにも目を向けて、多種多様なものやことの可能性を探る機会が求められているのではないでしょうか。『アートと遊びと子どもをつなぐメディアプログラム』では、[アート]の視点が取り入れられた様々な媒体(メディア)による新しい[あそび]を実現することによって、私たちをとりまく世界との「これからの関わり方」を提案していきます。
今回、3年ぶりに再開した「汗かくメディア」は第3期として新たに公募を開始しました。
[アート]と[あそび]と[メディア]の原点に立ち返り選考された「汗かくメディア2019」受賞作品三点は、過去の受賞作品とは少し違った、それぞれが特徴を持った魅力的な作品となりました。14日間の公開展示期間中、過去最高となる述べ約1,224人が参加し、たくさんの子どもたち、大人たちが新しいあそびを体験しました。

モノトーク

コココ

野呂祐人(造形表現)と工藤恵美(コミュニケーション学)によるアートワークショップユニット。造形あそびに特殊なルールや装置を取り入れ、モノと人の関係や、モノを介した人同士の関係を問い直すワークショップを制作・実施している。

作品解説
モノトークは、言葉を交わさずに誰かと一緒にカタチを作る共同の造形遊びです。今回は二つのバージョンをワークショップとして展開しました。モノトーク1は、二人で対面して交互に素材をグルーガンでつけていきます。会話をしないで作るというルールを共有し、素材やカタチを観察したり、相手の意図を想像したりしながら素材をつけていきます。完成後に会話をしてみると、お互いに違った解釈を持ったまま、一つの造形物を作っていたことがわかります。
モノトーク2は、3人で回転する机の上で造形をします。それぞれブロックでカタチを作り、机を回して交換し、回ってきたカタチを見てさらにブロックをつけ足していきます。また、机には仕切りがあり、相手が見えない状態で制作をします。一周すると、自分の作ったカタチが思ってもいない変化を遂げて帰ってきます。

モノトークには、他の人が作ったカタチから新しいカタチを発想し、次々に造形が変化していくという特徴があります。そのやりとりは、まるでモノ(カタチ) を通して会話をしているようです。そして普段の会話との違いは、明確な意思疎通がないことです。アートの世界では制作者の意図を通り越して、造形物自体に触発され強い感情やアイディアが湧くことが多々あります。モノトークは、造形物を媒介に他者とコミュニケーションすることに着目し、それぞれ違った考えを持ったままつながりを持つことや、その関係性から生まれる創造性を大切にしています。

 

作家感想
会期中に何度もワークショップを行うことができ、様々なペアやグループに体験してもらいました。その中でも親子や兄弟姉妹など家族同士の参加者が多く、「いつも接している家族でも、想像していたものと違うカタチができて驚いた」といった感想をいくつかいただきました。制作時の様子やワークショップ後の感想から、子どもの普段見られない行動に戸惑う親や、反対に親が意外なカタチを作り驚く子どもが多くいたことがわかりました。普段の関係性が少しずつ変わりながら、造形物を発展させていく様子が印象的でした。
また、今回モノトーク2を初めて未就学児を対象に行い、その反応が新鮮でした。年齢が高い子どもは、ある程度言葉を扱えるので、制作後に自分の作ったモノが他者の影響でどう変わったかを言語化してくれます。それゆえ、そもそも言葉をうまく話せない小さな子どもに、この遊びがどう映るかが不安でした。しかし、机を回し変化して帰ってくるカタチを見て、多くの子どもが驚きと喜びの表情を見せてくれました。明確な意思疎通ができなくても、他者とつながりをつくっていく様子に、共同の造形遊びの面白さを改めて感じました。

◎けだまマン

NODE

メディアクリエイターの交流、発信を行うことを目的にネットワークのハブとなる活動を行っているグループです。さまざまなメディア表現に関わるワークショップ、イベントなどの活動を行っています。
けだまマン制作:河村陽介 PHIRIP
www.node-lab.org

作品解説
「けだまマン」は毛玉状のヘッドセットを装着し、普段とは異なる視界を体験することができる作品です。
視覚情報が変換された状態で、身体性のズレを感じながら簡単な遊びを体験します。
けだまマンの外側にはカメラ、内側にはディスプレイがあります。
一定時間が経つと外界の風景が「左右反転」「上下反転」「揺れ」「色反転」「時間遅延」の5つのモードに変換されます。これらの変換された視覚で、プレイグラウンドを歩く、積む、バランスをとる、色を識別するなどの行動を1人、あるいは協力して思い思いに遊んでもらいます。このとき見ている視覚と実際の行動にズレが生じ、違和感が生じることで、ふだん無意識にできていた行動とは違った身体感覚を感じることが出来ます。

作家感想
今回の作品は、視覚と身体のズレをどのように体験するかに焦点を当てて制作しました。
基本はスマートフォンをベースとしたヘッドマウントディスプレイ型の体験装置ですが、VR(ヴァーチャルリアリティ)のような立体視を行うものではないため、単画面での実装になりました。
装着感については、VR用のヘッドセットの方が画面までの距離を短くすることができるものの、13歳以下の子どもには立体視による斜視などの影響が懸念されることから、画面までの距離がある単画面を採用しました。
毛玉のモチーフは、頭部を完全に覆い、外界の風景を直接視認できないようにして没入感を高めるためと、視界が悪いことからどこかにぶつけたり、転んだりしても衝撃を和らげるために毛玉状にしました。
見た目がフワフワでかわいいような、不気味なようなものにも見え、体験者が手探りでうろうろしたり、繰り返し同じ動作をしたり、思ったように動けなかったりと、通常とは違う変な動きをすることで、見ている鑑賞者にユーモラスな印象を与えていました。
今回は子どもだけでなく大人にも体験してもらいましたが、視点の高さが異なることや、年齢による視覚の認識の違いによって行動に変化が出てくるのが興味深かったです。
年齢も3〜4年生ぐらいになってくると視覚と行動が反転して起きるズレを楽しむような様子が見られました。
逆に低い年齢の子どもの方がすいすい歩いていくなど、適応力が高い印象がありました。
また、家族や友だち同士で体験者とともに遊んでいる場面では、ときにはまわりが助けたり、お父さんが体験しているときは逆にいじったりなどの行動を楽しんでる様子が見られ、遊び方をそれぞれ独自に考えてもらっていたのがよかったです。
普段接している家族を別のいきもののように扱っているのが、見ているだけでもおもしろく、意図した体験以上の楽しみ方が得られたかと思います。

◎ささえてハウス

SHIBATA Hidenori

1994年山形生まれ/岐阜県大垣在住
現在、情報科学芸術大学院大学(IAMAS)に在学中。大の旅好きで“旅”の要素を抽出した表現を模索し実験している。また、Agasuke Houseというゲストハウスの立ち上げやIAMAS Radio(仮)というラジオ番組のパーソナリティの1人としても活動中。
設計協力:fukaonozomi

作品解説
ささえてハウスは知らない人同士が屋根を支えて柱になることで成り立つ家をコンセプトとしたコミュニケーション装置です。大人も子どもも一緒に家の一部となり、共に頭が固定されることで生じる非日常的な行為・感覚を伴いながら移動し、語らいます。会場に散らばっているミッションカードを協力して見つけ出し、ミッションを達成することを通してお互いの関係性を深めていきます。実際のカードには身体的なミッション(協力して3回座って立つなど)、お互いを知るミッション(嫌いな給食について話すなど)を設定しました。作者自身が旅好きで様々な土地に赴き、そこで出会った人々との関わりから多くの影響を受けた経験があります。一方で、現代、同じ場所にいるのにも関わらずお互いを「空気」のような存在として扱ってしまっている人たちが自分を含めて増えているのではないでしょうか。だからこそ、ささえてハウスはその場にいる人の関係性に渦を生み、今まで透明化していた人たちとお互いに影響を与え合う接点をつくることを目的としています。

作家感想
今回の展示に向けての大きなアップデートは、安全性を高めるため装置の減量と大人も子どもも参加できるよう50cm前後の身長調節可能に改良し臨みました。会期中、子どもたちだけでもあまり負担にならない体験が可能だったこと、身長の高いお父さんは少し屈まないといけませんでしたが気軽に親子で参加してもらえたことは個人的に嬉しかった点でした。
実際に展示を行ってみて、「私もやるの?」と驚く大人も最初はなぜヘルメットを被るのかと疑問を浮かべる人も参加者同士で場所を指差し合い、お互い助け合い、声を掛け合いながら、自然と楽しんでくれているように感じました。重みのあるものが頭を固定して、さらに視野が狭くなり後ろ向きで歩くという危険な行為を含んでいるからこそ、お互いがお互いの目になり1つの生命体のようになっていました。また、空が高い秋晴れの中、愛知児童総合センターの外に歩き回ってるささえてハウスが非常に映えていたのが印象的でした。そのせいか、ひとたび誰かが体験し始めるとなんだなんだ?と遠目から見て人が集まってきてくれ、特に午後はひっきりなしに進めることができました。多くの方に体験してもらったことによって今後の改善点や活用法のヒントをたくさん見つけられた貴重な機会でした。ありがとうございました。

※プログラム内容は予告なく変更することがあります