アートと遊びと子どもをつなぐメディアプログラム汗かくメディア2014受賞作品公開展示【記録】
終了しました
- 会期
2014年9月13日(土)から9月28日(日)まで
第8回目となった今年度の公開展示も多くの子どもや大人が参加しました。毎回、デジタルメディアを介したあそびの応募が多く、今回の受賞作品もすべてコンピューターなどのデジタル機器があそびの仕掛けとなっています。センターでは、デジタルのあそびであっても、子どもたちがデジタルにとらわれず、体を動かし、工夫を凝らして自分たちであそびを広げられるような作品を支持しています。『チビ電カメラ』『まっくらプール』『イロプット』どのあそびも、一見シンプルに感じられます。しかし、そのために、あそびの仕組みや遊び方、より面白い方法、うまくできる工夫などを、その場にいる人たちと協力したり、自分で試したりしながら、自ら発見して行く姿がありました。(14日間の公開展示期間中に、約1万2千人が新しいあそびを体験しました。)
◎イロプット
ch・eat
作品解説
スクリーンの前に立つと自分の着ている服の色を拾って、同じ位置に自分の影がうつります。その前を直線の黄色いラインが右から左へと通過して行きます。そのラインに影が触ると音が鳴ります。いろいろなポーズをしたり、飛んだりしゃがんだり、走ってラインを追いかけたり、色々な音を様々な出し方で遊びます。
作家感想
遊びを考えるときにシンプルなものにしたいということを意識しました。説明も多くなく、遊べばどんな遊びかすぐにわかる遊びにしようと思いました。シンプルな遊びだからこそ、自分たちで考え新たな遊びに展開していくと思います。「イロプット」はカメラの前に立つだけでスクリーンに色が付き、黄色いラインに当たれば音がなるので、参加者はすぐに理解でき、遊ぶことができました。
展示をしてみて、最初は不安でしたが笑顔で遊んでいる親子を見ると安心をしました。黄色いラインを追いかけて遊んでいる子どもや友達と手をつないで色を大きくし、ずっと音を鳴らしている子ども達、お父さんお母さんのポーズを真似している子ども、あえて黄色いラインに当てずにギリギリまで近づいている子どもなど、子ども達それぞれで楽しんでいる様子がありました。シンプルな遊びの中で自分たちの遊び方を見つけている姿がありました。なにより嬉しかったのは、家族や友達と夢中になって黄色いラインを追いかけ、笑顔で遊んでいる姿を見ることができたことです。そのような姿をみて、展示することができてよかったなと思いました。
今回、周りの遊ぶ環境は整っていなかったのかもしれません。カメラが認識する範囲を示すテープの張り方ひとつで、今回よりももっとうまくできた可能性もあります。今後はそのような面も意識しつつ、これからはよりよい遊びを提供できるようにしていきたいです。
◎ちび電カメラ
[冨田 太基 + José María Campaña Rojas]
作品解説
作品解説
参加者は、発電パネル上で足踏みをして発電をします。発電された電気がある一定量を超えると、設置されたカメラが参加者を撮影します。撮影された写真は、パネルの前方に設置した大型のスクリーンにリアルタイムで投影されます。発電量によって撮影枚数が増減します。スクリーンには、普段意識して写す写真にはない表情が切りとられていきます。
作家感想
「ちび電カメラ」は、子どもたちがパネル上で体を動かし発電を行うことがポイントとなっているため、子どもが実際に触れるインタラクションが必要な作品でした。そのため展示前は、パネルが子どもたちの元気なパワーに耐えられないのではと思い不安でしたが、壊れることなく展示期間を乗り切ることができほっとしています。この「ちび電カメラ」は、団体で遊ぶ作品のため、一回の遊びの時間を30秒に設定していました。その時間内にパネル上でおもいっきり走る子どもや、カメラに向かってピースをしながら飛び跳ねる子どもなど、みな自由に体を動かしていました。また、撮影された写真をみて、「私、ここにいる!」と話たり、「もう一回走る!」といってもう一度遊ぶ子どもたちも多くみられました。大人が30
秒間体を動かし遊ぶのはとても大変なことですが、何度も気に入った写真がとれるまで挑戦する子どもたちをみて、改めて遊びに対するパワーや探究心を感じました。また、期間中に撮影された写真は5000枚を越え、子どもたちの夢中になって遊んでいる写真を数多く残すことができました。子どもから大人まで大勢の方に遊んでいただき大変嬉しく思います。
汗かくメディアでの展示を通し、作品に対する問題や制作していくプロセスでの改善点など、実際にインタラクションがある作品の難しさを経験できました。この貴重な経験を活かしこれからも作品を制作していきたいと思います。
◎まっくらプール
[カタハラ(片倉 理、石原 由貴)]
作品解説
トンネルを抜けた暗い空間に、ボールやスポンジ、布等の様々な素材で出来たプールがあり、その中を進んで行きます。プールの中にはセンサーがたくさん設置されており、ヒトの動きに反応して色んな音(水の音、泡の音、鈴の音、砂を踏む音、犬の鳴き声など)がします。想像力を膨らませて、素材の感触や音などを探りながら、暗やみの世界を楽しみます。
作家感想
とにかく子供たちのパワーに圧倒された2週間でした。暗いのが怖くて、遊びたがる子は少ないのではと心配しましたが、実際には多くの方が興味をもってくださり、なかには何度も遊んでくれる子もいました。はじめは怖くて不安そうだった子がゴールした途端に「もっとやりたい!」と言ってくれたり「プチプチがあった」「ボールがあった」とわかりやすい素材がある一方で、「あたたかい・気持ち良い・湯たんぽみたい」と想像が膨らむ素材があったのが面白かったです。実は動物の鳴き声は犬ぐらいしかなかったのですが、カエルやブタ、鈴虫など生き物の鳴き声として音を認識する人が多かったです。(片倉)
会期中、何人かの子が、まっくらな道の先を覗きこみ「おばけはいる?」と聞いてきた。私は「いないよー」と答えたが、改めて、暗やみの持つ想像を掻き立てる力を感じた。暗やみでは、殆どの事象が捉えられない。私たちはそれを補うように自身で「何か」の気配を作り出し、視覚以外の感覚から目一杯の情報を捉え、「何か」の正体を探る。この遊びでは四つん這いという姿勢によってその「何か」に近づき、半ば強制的に「何か」の潜む領域に触れさせられる。出てきた子から「ぜんぜんこわくなかった」「カエルの声がした」と報告を受けながら、まっくらプールは彼/彼女らに「何か」を探る体験を与えることができただろうか、と考えた。(石原)