あのねっと17号今月のテーマ 子どもの遊びと、おもちゃ・絵本
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地さんは「木のおもちゃと絵本のおみせクラッベ」の店長であると同時に、5歳と2歳のお子さんのお母さんでもいらっしゃいます。お店を開いたきっかけは、ご自身が子どもと一緒に遊びたいおもちゃや、子どもに読んであげたい絵本を手にできるお店が、身近になかったことだそうですね。
 お店に置かれている品物は、よく吟味して選んでいらっしゃると思いますが、子どもにはどんなおもちゃや絵本で遊んでほしいとお考えですか。


 おもちゃと絵本に共通して言えるのは、その子の好奇心に合ったものに出合わせてあげたい、ということです。自分が興味を持っていることが、目の前にあるおもちゃや絵本とイメージがつながると、想像力が広がったり、「もっとこうしたい」というワクワクした気持ちがわいたりします。そういう感覚は、大人も持っていますよね。
 お店に来られるお客さまから、「1歳児用のおもちゃは?」とか「3歳児用の絵本がほしい」と、お尋ねいただくことがあるんですね。でも、同じ1歳の子でも、性格や今までの遊び方によって、興味や得意なことは違うので、その子が持っているものを認めて、広げてあげたい。だから、お客さまにそう尋ねられた場合は、年齢ではなく、そのお子さん自身のことをお聞きしてから、合いそうなものをご紹介するようにしています。
 それと、小さいときほど見たり触ったりして感覚を味わい、もののしくみや成り立ちを直感する力を持っているので、その時期を大事にしてあげたいですね。文字や数字を覚えたりする知育玩具や、テレビゲームを全否定するつもりはありませんが、できれば7歳ぐらいまでは、遊んでいるうちにいろんな発見をしたり、遊びが発展していくおもちゃがいいと思います。
 絵本も、言葉が理解できなくても、耳から聞こえてくる言葉の響きや文章のリズムを体で感じながら、絵とつなぎ合わせてイメージをふくらますことができると思うんです。実は、上の子が3カ月のときにこんな体験をしました。機嫌が悪くてグズグズ言うので、理由もわからず困り果てた私は、とりあえず手元にあった『おさじさん』という絵本を読んであげたんです。そうしたら、泣きやんでじーっと聞いて、読み終わったらホッとした表情をしたんですね。それはきっと、「おさじさんがやってきました!」とか「アッチッチ、アッチッチ」といった言葉の響きから、ワクワクしたり、不安になったり、そして最後にあーよかったと安心するお話の起承転結を感じて、気持ちを落ち着けることができたのではないかと思っています。
どもの好奇心に合ったおもちゃや絵本に出合わせたいということですが、自分の子が何が好きか、すぐには思い当たらない場合もあると思いますが…

 確かに、子どもは成長するにつれて、親から離れて行ってしまうので、自分の子がいま何に興味を持っているのかが、ぼやけてきます。そういう場合は、たとえばその子が好きな食べ物とか、最近している遊びなどが参考になると思いますよ。遊びなら、家で静かに遊ぶのが好きなのか、外で体を動かすのが好きなのか。外遊びの中でも、砂遊びばかりしているとか、草むらにしゃがみ込んで虫を追っかけてばかりいるとか。もし、虫が好きな子であれば、図鑑的な絵本がおもしろい場合もありますし、特に好きな虫があるなら、その虫がモチーフになった空想的なストーリーの絵本を喜ぶ場合もあります。
 そうした子どもの興味に合わせて選びやすいように、うちのお店の絵本は、年齢別ではなく、動物・乗り物といったテーマごとに分け、さらに動物や乗り物の種類別に並べてあります。また、色についても、やわらかい色が好きな子もいれば、ハッキリとした色が好きな子もいるので、色合いで分けているコーナーもあります。
 おもちゃに関しては、4歳ぐらいまでは、よくするイタズラがヒントになると思います。何かを引っ張り出してしょうがないとか、物を投げてばかりいるとか。それは子どもの自然な欲求の表れですから、家の中の日用品でされては困るのであれば、それに適したおもちゃを用意するというのはいかがでしょう。
 叩いていいおもちゃは、そのように作られているので、「やってみたい」という気持ちを妨げることがありません。そうすると、叩きたかった気持ちが十分に表現できるので、すごく満足したり、納得したり。納得できると、していいこと、いけないこともわかってきます。「叩いちゃダメ」と言うだけでなく、表現したい気持ちをどこかに導いてあげてほしいですね。
どもは、ひとりで遊ぶこともあれば、大人のかかわりを必要とする場合もあると思います。おもちゃや絵本を媒介とした親子の関係については、どのようにお考えですか?

 子どもの遊びに親がどうかかわるかは、子どもの性格やそれまでの親子関係によって千差万別だと思います。でも、どの子についても言えるのは、短い時間でも子どもの要求に耳を澄ませていると、言葉で表現できなくても、してほしいこと、したいことが見えてくるということです。だから、大人はその気持ちに応えてあげることが大事だと思いますね。
 もし、家事に忙しくて手が離せなくても、気持ちに返事はしてあげられるのではないでしょうか。「これがしたかったのね」と認めて、「お皿洗ったら遊んであげるから、ちょっと待っててね」と言えば、子どもは泣いていても、終わったら来てくれるんだなと、だんだんわかってくると思います。そのときに大事なのは、「お皿を洗ったら」という約束を必ず守ること。そうすれば、子どもはそこまでは踏ん張れるし、親にとってもそれまでに用事をすませようという目標になります。
 それと、今は核家族で大人の数も少なく、子どもの面倒を見るのは、日中はお母さんひとり、土日は役割交替でお父さんひとりという場合もありますよね。そういうときこそ、おもちゃや絵本に助けてもらって一緒に遊ぶと、親は気持ちがラクになりますし、楽しくなると思います。子どもにつきあうのではなく、大人も一緒に楽しめるおもちゃで遊んだり、絵本の世界から何かを感じることができれば、子どもの気持ちに共感できます。子どもも、大好きなお父さん・お母さんが一緒におもしろがってくれると、楽しいですよね。