あのねっと 今号の特集テーマ 「おいしいねー」いつも笑顔で食べたいな。  
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まきのとしこ
金城学院大学・生活環境学部食環境栄養学科教授。専門分野は小児成人病・肥満、生活習慣病など。成人した2人の娘をもつ。
朝食をきちんと食べて体のリズムを整える
まず今の子どもの「食」にはどのような問題があるのか、教えていただけますか。
 いま一番問題なのは、小学生のうちから塾通いなどで、生活が夜型になっている子が多いことです。夜寝る時間が遅いと朝起きられず、食欲がなかったり、ゆっくり朝食をとる時間がなくなったりします。朝食をきちんと食べないと、保育園・幼稚園や学校に行く前にトイレを済ますことができず、体のリズムの乱れや低体温などの問題が起きやすくなります。
 1日の体のリズムを保つ基本は、朝早く起きて昼間しっかり光を浴び、よく体を動かすことです。夕食は寝る3時間前、できれば7時ぐらいまでに食べるのが理想です。お腹いっぱい食べてすぐに寝てしまうと、取ったエネルギーを十分消費できず体に蓄積してしまい、太ってしまうこともあります。また、朝起きたときにお腹がすかず、朝食が食べられない原因にもなります。お父さんの帰りが遅い場合は、待たずに食べ、父と子のコミュニケーション不足が心配なら、朝食を家族そろって食べるとか、土・日曜日に一緒に食べるというふうに工夫してみてはいかがでしょうか。
 わが家の場合も、父親が夜いないことは時々ありましたが、その代わりに下の娘が高校を卒業するまでは、朝7時から7時半の間に家族みんなで朝食を食べるようにしていました。また、夕食も親子で食卓を囲めるようにするために、夜間の塾には行きませんでした。その代わり、塾に行きたいときは、夏休みや冬休みの昼間を利用するようにしました。親が、塾に行かなくていいと言いにくい現状はありますが、長い目で見て子どもにとって何が一番大切かを、大人がしっかり考えて自信をもって判断することも必要だと思いますね。
パン食には卵や牛乳を組み合わせて
食事の内容について、何か配慮すべき点はありますか。
 よほど刺激のあるもの以外は、大人と同じものを食べてかまいません。ただ、2歳ぐらいにならないと歯が生えそろってこないし、胃の容量も少ないので、固いものや生野菜をたくさん食べるのは難しいですね。年齢に応じて、アゴが十分に発達できるように、よくかむ食べ物を与えることが大事です。また、子どもは緑色のピーマンよりも、赤や黄色のピーマンのほうが甘くておいしいと感じるなど、大人とは味覚が少し違うことを知っておくといいですね。
 朝はパン食にしている家庭が多いですが、パンはお米ほどタンパク質のアミノ酸組成がよくなくて、成長に必要なリジンという成分なども少ししか含まれていません。ですから、パン食の場合は、卵や牛乳など動物性タンパク質を多く含む食品を組み合わせると栄養のバランスがよくなります。いろいろなものを食べたほうが楽しいし、たとえば魚でもいろんな種類を食べることで、異なるアミノ酸組成のタンパク質を取ることができます。
 また最近は、小学生のうちからダイエットをする女の子が増えていますが、骨量の増える時期に誤った食事制限をすると、将来、骨粗鬆症になりやすくなります。小学5〜6年生ごろの第二次性徴を迎える時期には、皮下脂肪が増えて女らしい体型になっていくわけですが、それを肥満と勘違いする場合もあるようですから、女の子の体の自然な変化を親がきちんと教える必要がありますね。
まず親自身が子育てや食事を楽しもう
落ち着いて食べてくれないなど、食べ方の心配については どうすればいいでしょうか。
また、楽しく食べるためのアドバイスは?
 まず基本的な食べ方として、ハシを正しく持つことや、何種類かのおかずを交互に食べる「三角食べ」を、幼児のころから教えることが大事です。そうした食べ方は、以前は祖父母や両親、年上の兄弟から自然に伝承されて会得できましたが、今はタテのつながりが希薄になり、子どもたちがどうやって食べていいかわからない状況があります。もし近くに祖父母がいるのであれば、嫌がらずに時には一緒に食べるとか、近所の子どもを家に呼んでみるとか、どんな形でもいいので、みんなで食べる環境をつくることができるといいですね。
 落ち着いて食べてくれないというケースは、1歳ぐらいならそのうち直ると思うので、繰り返し言い聞かせることが必要です。2歳を過ぎても変わらず心配があるようでしたら、小児科医に相談してみてください。
 気分よく食べればおいしいし、栄養の吸収もよくなります。気持ちよく楽しく食べることができると、胃の活動がよくなり、消化酵素の分泌も活発になるからです。子どもが楽しく食べられるようにするには、まずは親が楽しく子育てや食事をすること。完璧にしようと思うと親にも子にも負担になりますから、あまり神経質にならないことが大切ではないでしょうか。
子どもの好き嫌いを直したいのですが、何かいい食べさせ方はないでしょうか。
発育に影響が出るほどの偏食は困りますが、多少の好き嫌いは、大人が食べていれば子どももいつか食べるようになる、と考えてはどうでしょう。子どもが食べてみようかなという気持ちになるよう、いろいろな食品をいろんな形で料理して、食卓に出しておくようにするといいと思います。時々お弁当に入れて、食べてきたら大いにほめてあげるのも効果的です。
父親の帰りが遅く、母親ひとりで幼い子どもたちに食事をさせるのはしんどいし、
子どもがこぼしたりすると小言も多くなります。
しんどいと感じるのはつらいことですが、あなた自身、子育てを難しく考えすぎているところはありませんか。もしそうなら、あまり完璧にやろうとしないことが一番で、自分や家族のためにすることの優先順位を決めて、無理をしないで、息抜きをする時間を持つようにするといいですね。食事中は、こぼしても気にならないように、ビニールシートなどを敷いてはどうでしょうか。
子どもは小学校高学年で食欲旺盛です。
最近コンビニでスナック菓子や炭酸飲料を買い食いするようになり、困っています。
食事をどのようにとっているかにもよりますが、多少のスナック菓子や炭酸飲料なら問題ないと思います。6年生ぐらいになると3食では足りない子もいますので、おやつとして、リンゴなど水分の多いものやお好み焼き・ふかし芋など、3度の食事では足りないカロリー源を中心に、補ってみてはどうでしょうか。また、コンビニの利用の仕方を教えることも必要でしょう。