子どもより親の方がはしゃぐ。
それぐらいが理想ですね。

風見 しんごさん(タレント)
1962年広島市生まれ。1982年デビュー。現在、テレビ番組「伊東家の食卓」、インターネットの情報生番組「TOKYO ひかり TOWN」(毎週木曜日15:00〜16:30、http://casty.jp/hikaritown/)などに出演中。2003年3月までNHK教育テレビの子育て情報番組「すくすくネットワーク」の司会、2002年5月にプロ野球「横浜×巨人戦・子供の日スペシャル」の始球式投手を務める。DVD・ビデオ「劇場版ウルトラマンコスモス1〜2」リリース。1人娘のえみるちゃんは小学1年生。

親というより「子どもの先輩」。

 娘のえみるが生まれたときから、僕の方は父親としての実感が全くないのに、奥さんはもうしっかり母親になっていて、意識のギャップが大きかったんですね。それで、奥さんに「ちょっと待て! 母親ひとりが頑張ってゴールしてもそれはオフサイドで、得点にならないシュートを打っても疲れるだけだから、夫婦で一緒にドリブルを渡し合って子育てしよう」と言ったんです。そうしたら「あんたのドリブルがあがってくるのが遅い」って(笑)。そのときに話し合ったのが、いい父親・いい母親になろうと思うんじゃなくて、「子どもの先輩」でいようということでした。
 子どもの先輩として、僕が自信を持って娘に言ってきたのが、大きな声であいさつすること。僕自身も母親からそう言われて育ち、声が大きいことで友だちができやすかったりして、いいことがたくさんあった。萩本欽一さんに初めて会ったときも「有名人の前に来たらふつうは萎縮するもんなのに、なんだそのバカでかい声は。合格!」って。
 うちの家族は3人ともしゃべるのが好きで、僕の仕事のまんま、情報バラエティ番組みたいな家庭です。娘も学校であったことを毎日報告してくれて、それがコミュニケーションになっていますね。娘には僕たちのことを「チチ」「ハハ」と呼ばせています。奥さんとお互いの顔を見ながら、どう見ても「パパ・ママ」のツラじゃないし、こういう仕事なんだから人と違う呼び方にしようと。
 去年の夏のことですが、娘は友だちが作った工作がおもしろそうだと思って、友だちとケンカしたあげくに持って帰ってきちゃったんです。僕も奥さんも叱ったんですが、娘はすごく落ち込んでいたので、僕は先輩として「実はチチも同じような経験があるんだ」と、友だちのクワガタ虫を取ってしまい、返すに返せなかったことが今でも気になっていると話してやった。そうしたら明るさを取り戻し、友だちに謝りの電話をしたようです。
 叱ったあとに「怒られることがわかっていたのに、自分から正直に話したことは偉かった」とほめてやったら、次の日から「ざんげの時間」ができました。こちらが聞いてもいないのに、クッションで隠していた床のキズとか破れた壁紙のこととか、もうざんげだらけ(笑)。そのたびに「ほめてくれないの?」と聞いてくるから、悪いことをしたのに誰がほめるかって。
ちょっと難しい本を読むのも寝かしつけのコツ!?

 子どもを寝かしつけるときの絵本の読み聞かせは、0歳のころから今までずっと僕がしています。僕の声を聞いて寝息を立てる娘を見て「父親なんだな」と実感したり、自分でも絵本が懐かしかったりして、半分以上は自分のためにしているところがありましたね。
 最初はやさしい声で読んでいたら、あるとき娘が「なんで桃太郎は鬼を退治するの? 鬼は悪いことをしてない」と言うんです。大人は鬼イコール悪者と思っていますけど、絵本には細かいことまで書いてないので、初めて話を聞く子どもはそうは思わない。それに気づいてからは、鬼はいかにも悪そうに、魔女はいやらしい声でと、演技をつけて読むようにしました。
 それが、幼稚園の年長ぐらいになると、感情を入れて読んだらイマジネーションをかき立てちゃって、寝なくなりやがって(笑)。だから、最近は感情移入をやめて、もっぱら「ウルルン滞在記」か「日本昔ばなし」風の淡々とした口調で読んでいます。それか、1年生にはちょっと難しい「ファーブル昆虫記」なんかを読んだり。そうすると、うれしそうにはしてるんだけど、時々意味のわからない言葉が出てくるので眠くなっちゃう。
 娘自身も本を読むのが大好きです。特に声に出して読むのが好きで、最近は「人の体」という図鑑まで声に出して読んだりして。映像の方は動きのあるものに興味があって、カンフーものやマイケル・ジャクソンを見てるんですよ。僕としては「フランダースの犬」のような感動ものを一緒に見て、泣ければいいなあと思っていたんですけど、そういう物語は本で読む方がイマジネーションが広がるのでいいみたいですね。
子育てには今しか楽しめないことがある。

 遊園地のジェットコースターは、6歳までは親が同伴でないと乗れないですよね。子どもは何回も乗りたがるんだけど、親としては2回乗ったら「もういいだろ」とつい思ってしまう。この前、7歳になってから遊園地に行ったときには、「ひとりで乗りたい」と言うので乗せたんです。そうしたら、並んで待っているときから僕らと一緒のときより楽しそうにしてるし、降りてくるときもひとりで乗れた達成感からかすごく生き生きしてる。そういう姿を見ると、6歳のうちにあと3回手をつないで並んで乗っておけばよかったなって。過ぎてからもったいなかったと思うことがよくあるので、最近は「今しか楽しめないことは楽しまないと損だぞ」と、いつも思っています。
 子どもと遊ぶときは、奥さんもそうですが、親が楽しめることを一緒にやるというスタンスです。「子どもにさせてやらなきゃ」と思うと親はつまんないだろうし、子どもも楽しいと感じるかどうか。うちでは、冬はスキーやスノーボード、夏はスキューバダイビングとか、山へカブトムシを取りに行くとか、まず親の希望を出す。その中から、たとえば4歳ならこれは大丈夫だろうから、今度の休みはそれでいこうと。だから、スキーは3歳からやっていて今は奥さんよりうまいです。子育てを楽しむためには、親の方がはしゃいで遊び、子どもが「もう、いーじゃん」というぐらいが理想だと思いますね。
(取材日/2003年2月18日)