1960年東京生まれ。女優。慶應義塾大学卒。1979年に映画でデビューし、翌年NHK連続テレビ小説「虹を織る」で主演。その後、テレビ・映画・舞台で幅広く活躍。92年に結婚し95年7月に男児を出産。夫はTBS勤務。98年に国連開発計画(UNDP)親善大使に就任。著書にサイエンス・エッセイ「空飛ぶホタテ」、子育てエッセイ「『怪獣』のそだてかた」など。


 いま息子は5歳で近所の幼稚園に通っています。私の母と妹が近くに住んでいるので、私や夫が幼稚園の送り迎えができないときは母がしてくれますし、妹もよく息子の面倒を見てくれます。妹の子どもは2歳でだいぶ一緒に遊べるようになってきて、兄弟みたいな感じですね。公園や幼稚園で知り合ったご近所のお友だちにも助けられ、親兄弟やお友だちあっての子育てだと感じています。
 夫は日頃からよく息子と遊んでくれる方ですね。夏休みには夫の親戚が住む岐阜県の郡上八幡に必ず行き、 親子で朝から晩まで川遊びや虫取りをしたり、バーベキューをしたりして楽しんでいます。
 フルタイムで働いている人に比べれば、私は時間の余裕があり、子どもに関わる時間は比較的長いと思います。舞台や連続ドラマの仕事があると寂しい思いをさせるし、後追いされる辛さもありましたが、3歳過ぎから言い聞かせるとわかるようになってきました。
 看護婦さんを取材する番組を長くやっているんですけど、看護婦さんのお子さんは寂しい思いをした経験があっても、働くお母さんの後ろ姿を見て自分も看護婦を志す方が多いそうで、寂しさも一過性のものなんだなと思いますね。ただ、もうしばらくは「ママ、ママ」と言ってくれる時期なので、なるべく子育てを中心にやっていきたいと思っています。
 幼稚園に持っていくお弁当には、基本的に息子の好きなものを入れています。おにぎり、ソーセージ、枝豆が定番で(笑)、たとえばソーセージとニンジン、ピーマンを一緒に炒めると、ニンジンは細く切ったのを1本食べる程度なんです。離乳期は魚の干物やきんぴらゴボウまで、いろんなものを食べていたのに、1歳半頃から偏食気味になり好みもよく変わりました。いまは納豆ごはんが大好物で、なるべく外遊びをさせてお腹をすかせると白いごはんはいっぱい食べます。
 月1回の幼稚園のお誕生日会では保護者がカレーやシチューを作るんですが、みんなが一緒にいるおかげで息子もカレーが食べられるようになったり、近所の釣り好きのお父さんから「釣った魚をみんなで食べよう」と言われて、あじフライが食べられるようになったり。また息子の友だちが家に遊びに来たときにみんなでギョーザを作ったら、具のニラも食べられるようになりました。少しずつ食べる種類は増えてきて、偏食についてはあまり神経質にならなくなり、よく食べて元気だったらいいかなという感覚です。
 私はお料理は好きなんですが、忙しいときはレトルト食品などを利用したりして、アバウトにやっています。息子は最近、大人の真似をしたがるので、大人がワインを飲むときはワイングラスにお茶を入れたり、ナイフとフォークを使わせてあげたり。親子ともストレスをためずに、楽しく食事することが一番だと思いますね。
 息子は2歳のときにぜん息になり、夜にも発作を起こして、何度も夜間急病センターにお世話になりました。小児科のお医者さんには「とにかく薄着で鍛錬を」と言われ、基礎体力づくりを心がけていますが、幼稚園で毎日はだしで野猿のように駆け回り(笑)、天気のいい日はそのあと公園でも遊んでいるので、抵抗力はだいぶついてきた気がします。
 発作の予兆はパターンでわかるようになり、このくらいの呼吸になったら吸入しないとダメとか、少しぐらいのゼロゼロだったら薬を飲まなくても大丈夫だと判断できるようになったので、慌てなくなったかな。最近は発作も減って、小学校に入るころまでにはなくなるかなと思っています。
 日ごろ思うのは、物や情報があふれた便利な日本で、子どもにガマンを教えるのは難しいなということですね。外で「ノドが乾いた」と言えば自動販売機やコンビニがあるし、「おもちゃを大切にしましょう」と言っても、壊れたら直すより買った方が安いわけですから。親がしつけようとしても、祖父母や親戚がクリスマスだ誕生日だと物を与えてしまうし(笑)。まあでも、そういう状況が特別で、ガマンすることや物を大切にすることは、大きくなるに連れて徐々にわかってくれればいいと思っていますけどね。
 私は、世界の貧困撲滅にとりくむ国連開発計画の親善大使を務めていて、年1回、開発途上国の視察をしています。これまでパレスチナやカンボジアに行きましたが、そこでは食べ物の種類も限られているし、栄養不足や衛生状態の悪さのために、乳幼児の死亡率が高い地域もありました。そういう状況に対して、日本に住んで多種多様な食生活を送り、便利な生活がしみ付いた自分が、何もできないことにガク然とするんですが、一方、グローバルな視野で息子のことを考えると、「納豆ごはんばかり食べていても元気ならいいかな」とか、「人様に迷惑をかけない子にさえなってくれれば」と思いますね。
●取材日/2001年1月9日